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2023.04.03連載:インタビュー【HAGISO 宮崎晃吉さん】谷中の建物をリノベーションし、新しい価値を作り出す

下町情緒あふれる谷中エリアは、昔から東京芸術大学の学生が暮らす学生街でもありました。街にゆかりのある人々にインタビューするシリーズ企画、第2回は谷中にある古い建造物をリノベーションし、最小文化複合施設「HAGISO(ハギソウ)」をはじめ様々なショップやホテルを作り出している株式会社HAGISO代表取締役の宮崎晃吉(あきよし)さんにお話を伺いました。

 

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HAGISO前にて。HAGISO代表の宮崎晃吉さん

 

西日暮里駅からもほど近い、谷中にある「HAGISO」は、1階がカフェ「HAGI CAFE」、2階にはホテル「hanare」レセプションなどがある最小文化複合施設。じつは、もともとは東京藝術大学の学生たちが暮らす木造2階建ての賃貸アパート「萩荘」でした。このアパートをリノベーションし、現在の「HAGISO」に生まれ変わらせたのが、元住人である宮崎さんです。

 

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HAGISOの2階にある「hanare」のレセプション

 

「僕は群馬県前橋市出身、東京藝術大学の建築学科への入学をきっかけに上京し、2006年頃から萩荘に暮らし始めました。居心地がよくて、大学を卒業してからもしばらくは暮らしていたんですよ。」と宮崎さん。「学生時代、研究室のプロジェクトとして、お寺の脇で期間限定の美術館プロジェクトを行いました。路地が通れなくなり、近隣住民には迷惑をかけてしまうので、一軒ずつご挨拶することになったのですが、そのときに街の人たちと知り合いになることができました。そして、この街が面白いと感じるようになっていったんです」と、谷中の街そのものにも親しみを感じていたそうです。

 

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昔ながらの木造アパート「萩荘」。リニューアル前の佇まい

 

1955年に建てられた「萩荘」は、当時から開放的だった雰囲気もあり、様々な人々が集う場所となっていました。しかし建物は老朽化し、東日本大震災も発生。大家さんは建物を解体し、跡地を駐車場にしようと決意します。しかし......。

 

「解体は仕方ないかもしれない。けれども、ただお別れするのは忍びない。そこで、住人や元住人たちが集まり、建物とお別れするイベントを行いたい、と大家さんに掛け合ったんです。当時、僕は勤務していた磯崎新アトリエを退職し、独立したばかり。時間もたっぷりあったんです」と宮崎さん。そして開催されたイベントが、その後の宮崎さんや「萩荘」の運命を大きく変えた「ハギエンナーレ」だったのです。

 

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「ハギエンナーレ2012」展示風景

 

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「ハギエンナーレ2012」展示風景

 

「ハギエンナーレ2012」は、2012年の2月25日から3月18日にかけて、「萩荘」の元入居者や萩荘に愛着を持っていた人々が集まり、萩荘全体を使って展示をするというものでした。総勢20名以上の作家によって、萩荘には1,400人もの人々が訪れました。

 

「大家さんも本当に喜んでくれて、建物と場所のポテンシャルに気づいてくれたようなんです。『これは...』と思って、すかさず駐車場として運用する場合や、新築の集合住宅を作る場合、リノベーションする場合といった形で、萩荘とこの土地をいかに利用するかの計画書を作り、大家さんにプレゼンしました」。宮崎さんの熱い思いと現実的なプランは大家さんの心をひきつけ、当初予定していた解体計画は撤回、リノベーションすることとなりました。そして2013年3月に「HAGISO」が誕生しました。そして、宮崎さんはHAGISOのほかにも、谷中の古民家のリノベーション、そして新しい事業を次々と展開していくようになるのです。

 

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ホテル「hanare」の宿泊棟。昔ながらの雰囲気を残す空間は外国人に人気

 

「HAGISO」にはホテル「hanare」のレセプションしかありません。宿泊客は、チェックインをレセプションで済ませてると、徒歩数分のところにある宿泊棟に移動します。この宿泊棟もかつては木造アパートでした(宿泊記事はこちら)。「谷中の街全体をホテルとして、楽しんでもらいたくて、お客さまには宿泊時にオリジナルマップをお渡ししています。銭湯や居酒屋など、谷中ならではの空気を楽しんでほしい。外国からわざわざ「hanare」にやってくる方もいらっしゃいますよ」と、宮崎さん。

 

hanareの宿泊棟のほかにも、宮崎さんはカフェ「TAYORI」や焼き菓子専門店「TAYORI BAKE」ジェラート専門店「asatte」など、続々と谷中に素敵な施設を作り始めます。「僕たちの活動を見てきてくれた地元の人たちが『こんな建物があるんだけど』と、声をかけてくれることが増えてきました。そして、スタッフのなかからも『こんなことをやってみたい』とアイデアが出てくる。手掛けるプロジェクトが自然に多様化していったんですね」と、宮崎さんは笑みをこぼしながら語ります。

 

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「TAYORI」店内。古い住まいを改装した心地よさと農家から直接取り寄せた食材を使ったおいしい食事が人気

 

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TAYORIの「日替わりランチ」一例

 

「観光客だけの施設でなく、かといって地元の人たちだけの施設でもない。両者が入り混じる場所を作っていきたい」と語る宮崎さん。現在、株式会社HAGISOの活動は、谷中から広がり、鶯谷のホテル兼カフェ「LANDABOUT」( 宿泊記事はこちら )や、宮崎さんの地元、前橋の「しののめ信用金庫」など、活動範囲がどんどん広がってきています。

 

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笑顔がさわやかな宮崎さん

 

インタビューの最後に「谷中は路地が好きです」と、おすすめをいただいたスポットは、宗林寺裏からasatteにかけての細い路地。「谷中はお寺さんの借地が多いせいか、敷地の境界がゆるやかなんですよね。だから、路地の脇には植木やベンチなどが置かれていて、独特の雰囲気がある。新しい街にはない魅力だと思います」と、独自の視点を話してくれました。この地に寄り添いながら新しい風を起こす宮崎さんのこれからの活躍にも注目です!

 

HAGISO
住所 東京都台東区谷中3-10-25
TEL 03-5832-9808
営業時間 モーニング8:00~10:30、12:00~20:00(L.O.19:30)
不定休
https://hagiso.jp(外部サイトへリンクします)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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