2014.11.19Special Interview「上野動物園、むかし・いま・みらい」

[第4回:上野と上野動物園]
●恩賜上野動物園園長
土居 利光さん
●聞き手
佐藤 輝光(松坂屋上野店)

130年を超える歴史を持つ、上野動物園。上野という土地と深く関わりながら、共に歩んできた上野動動物園の歴史的なありようと地域とのつながりについて、土居園長に伺いました。
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■上野という土地に根ざして


佐藤:上野という場所については、どのように感じていらっしゃいますか?
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土居:ここはいいところですよ。これほど自然が残っているところはない。みんな気づいていないようですが、季節ごとにトンボの種類がだんだん変わっていくんです。セミも、こんなにたくさん鳴いているところはないし、不忍池には、カメやスッポンもいる。他の池と比べても、水がきれいでしょ。浄化槽を持っているから、比較的きれいなのです。ハスもすごい。東京で、これだけ見られるところはないですよ。
それと、強く実感したのは、上野は地元とのつき合い方が深い。観光連盟、警察、消防、博物館を含めて、つながりが強く、上野会という会合も月一回開催しています。上野の街で商売している人たちがよく、動物園や美術館がある上野の山のことを“お山”と呼びますが、上野の文化ゾーンを街が一体となって盛り上げている感じがあります。上野で商売をしている人たちからすると、困ったことがあれば助けてやろうとか、一緒にやろうという思いがある。それはたぶん商売ということを超えて、街も山も含めて上野は一つという共同体意識があるからだと思います。やはり、土地に歴史があると違う。上野動物園は生まれて130年以上、ずっとここでやって来たわ
けで、地元とのつき合い・つながりが強いというのが、ここに赴任してはじめてよくわかりました。
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■歴史を背負いながら


土居:先日、モスクワ動物園に招待されて行ってきたのですが、150年という歴史があって古いし、どこかの時点で上野動物園とのつき合いがあったんでしょうね。だから、招待状を送ってきてくれたわけですが、そういう歴史というのは大切にしなければならないと思いました。上野動物園は、これまでに繁殖賞を143種もいただいているのですが、この動物の繁殖というのはとても大変なんです。繁殖賞は、国内で初めて繁殖に成功した動物園や水族館などに対して、日本動物園水族館協会から授与される賞ですが、これをもらうことが、なぜすごいかというと、繁殖には一定のノウハウがあって、そのやり方を教われば、他の施設でも、それが可能になるわけです。だから、最初に繁殖に成功するのは大変ですし、すごいことなのです。そういう面から見ても、これだけの数の繁殖賞をいただいているのは、上野が歴史を背負っている証でもあるわけです。「アイアイの森」も、先駆的な取り組みの一つですが、あそこにはブラウンキツネザルやアイアイ、フォッサなど、マダガスカルの動物たちを集めています。その中でも、特にアイアイについては、日本ではここにしかいないし、世界的にも有名です。しかも、アイアイを動物園や研究施設で繁殖させている例というのは、数少ない。ちゃんとした施設を持ち、繁殖もさせているから、海外で評価されているわけで、そういう意味では、いい施設をたくさん持っているのです。
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佐藤:これまでのさまざまな取り組みが、まさに歴史を一つ一つ創ってきたんですね。

土居:五條天神神社の近くにタブノキが生えているのをご存知ですか?タブノキというのは、クスノキ科の常緑高木ですが、海辺に近いところに生える木なんです。その大木が残っているということは、昔、このあたりまで海岸線が来ていた証拠だというんですね。そんなふうに、上野はこんな狭いエリアに池があったり、台地と低地にまたがって動物園が配置されていたり、斜面地には自然も残っていたり、そういう環境も楽しみながら、動物園を観ることができる。いろいろな楽しみ方ができる場所なんです。

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※不忍池のハスと、ハス花の写真2点は、土居様よりご提供いただいた、2014年夏の風景です。

(次回につづく)


[第1回:変化する上野動物園]
[第2回:生態に応じた、先進の環境づくり]
[第3回:自然保護の象徴としてのパンダ]

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