2014.11.12Special Interview「上野動物園、むかし・いま・みらい」

[第3回:自然保護の象徴としてのパンダ]
●恩賜上野動物園園長
土居 利光さん
●聞き手
佐藤 輝光(松坂屋上野店)

上野動物園の人気者・パンダ。自然保護の象徴的な存在とされるパンダは、進化の過程で、どのような生存戦略を選択し、いかなる生育環境で暮らしてきたのでしょうか。また、そうした希少種であるパンダを動物園において飼育する意義とは何なのでしょうか。第3回目の今回は、パンダについて、土居園長に伺いました。zoo_thumb3

■自然保護の象徴的存在


佐藤:海外から来た動物といえば、やはりパンダですね。
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土居:パンダは典型的な例といえますね。今、上野には2頭来ていて、お金がかかるとか、言われていますが、これは野生のパンダを保護するための資金として中国に協力しているわけです。パンダは、野生で1600頭くらい棲息しているといわれています。エリアとしては、九州よりも狭くて、四国よりも少し大きいくらいのところに1600頭いる。簡単に言うと、山手線の内側に3?4頭が棲息している比率です。そんな広いところを調べるといっても大変でしょ(笑)。そういう調査にお金がかかるし、施設で保護するのにもお金がかかる。その国が全部負担すればいいという論理も成り立つかもしれませんが、そういうものでもない。動物園や自然保護に携わる人たちからすると、パンダというのは、自然保護の象徴的な種として見ているんです。
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パンダって、なぜかわいいと思います?
頭が大きくてユーモラスということもありますが、赤ん坊とか、子供に似ていると思いません?仕草も似ていて、そこにかわいさがある。他の動物は、ああいう格好をして座りません。パンダ座りといって、骨格がそういう形になっているのですが、おしりと腰のところで腰掛けて、ものをつかんで食べる。多くの動物は、ああいうふうにものをつかんで食べるということができない。パンダには、第6の指、第7の指と言われるような突起があって、そこに竹をのせるようにして食べるからできるわけですが、子供の食べ方によく似ている。そういう意味でもかわいいから、動物園の人気者です。でも、そのパンダが進化の過程で竹を主食に選んだことで、自ら絶滅の道を選んでしまったともいえるんです。
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■パンダの生存戦略


佐藤:絶滅の道を選んだというのは、どういうことですか?

土居:どんな生物でもそうですが、進化の過程で環境に合わせて適応するようにして生存してきました。普通の熊は、いろいろ食べるので雑食です。でも、パンダは、竹を主食にすることを、生存戦略として選んだ。なぜなら、他の動物は竹をあまり食べないから。竹がある限りは、安泰なわけです。だから、パンダはそういう環境で適応していくことを進化の過程で選んできた。ただし、人間が環境を変えてしまい、竹の生息場所を分断したり、生息面積が少なくなったりしたら、絶滅してしまう。生物というのは、環境に依存するようにできているんです。それは人間も同じ。1人で自然の中では絶対に生きられない、そういう選択をしてきたわけです。パンダは、img-4-4竹を主食に選んだことで、その環境がなくなれば絶滅するという道を選んだ野生生物の典型例なのです。かわいいというだけでなく、なぜ動物園にパンダが展示されているのか、パンダはどういう動物なのかを考えることではじめて見えてくることです。動物園の動物というのは、常にそういう見方をすることで発見がある。年間、3?400万人の方に来園していただいていますが、そのうちの1割や2割の人でも、そういうことに関心を持ってもらい、人間の生活を見直す、動物や自然と我々人間の関わりがどうあるべきなのかということについて、少しでも考えを巡らせてもらえるのであれば、動物園というのは存在意義があると思います。楽しいというのも一つの要素ですが、動物園は、そういう考えるきっかけを提供する場所でなくてはならない、私はそう考えています。動物園を訪れた時、そういうことをどこかで少しでも感じられる、そんなインパクトを与えられる施設にしていかなければ意味がない。楽しいだけではなくて、なぜだろう?と感じさせられるところがなくてはいけないと思うんですね。

(次回につづく)


[第1回:変化する上野動物園]
[第2回:生態に応じた、先進の環境づくり]

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