2014.11.05Special Interview「上野動物園、むかし・いま・みらい」

[第2回:生態に応じた、先進の環境づくり]
●恩賜上野動物園園長
土居 利光さん
●聞き手
佐藤 輝光(松坂屋上野店)

動物園の飼育環境は、劇的に変化しています。動物たちの生態に応じた暮らしやすい環境づくりのために、どのような工夫や努力がされているのでしょうか。土居園長に、上野動物園の先進的な取り組みについて伺いました。
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■暮らしやすい環境づくり


土居:昔の象舎って、ご存知ですか?モートといって、周囲が堀のようになっていました。
今は、土になっていて、土浴びができるようになっているんですが、大きい動物は広いところで飼うし、群れで暮らしている動物は群れで飼うというように、生息環境に合った暮らし方をするのが基本になっています。ただ、動物園ですから、自然そのものをつくり出すことはできないので、なるべく動物が暮らしやすい環境をつくるようにしています。家族構成や大きさというのは変えることができない。だから、そこは最低限、環境としてつくってあげる必要があるわけです。
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佐藤:上野動物園は、他と比べて先進的なのでしょうか?

土居:日本の中では先進的だと思うし、海外と動物のやり取りもできる施設になっています。いちばん見てほしいのは、ゴリラ舎ですね。ゴリラは通常、1頭の雄に、複数の雌とその子供で成り立っています。群れによってその数が多くなったりするわけですが、ここのゴリラ舎は、できるだけ自然に近いかたちで暮らせるようにつくっています。昔は、昼間、群れでいても、夜、部屋に戻ると個室になっていたんです。普通に考えるとおかしいと思いません?群れでいるのが当たり前なのに。それで、2、3年前から、個室の扉を開け放して出入り自由にし、好きなところに行けるようにしています。餌もかなり変えました。ゴリラというと、主に果物を食べているイメージを持っている方が多いと思います。確かに以前はフルーツをたくさん与えていました。でも最近は、野菜やその辺りに生えている木の枝や草です。ニシローランドゴリラは、果物だけじゃなくて、地面に生えている木の新芽や葉、樹皮などを食べて育ちます。果物を与えるのも間違えではありませんが、人間の食べる果物というのは改良したものですからね。糖分が多くて甘すぎる。要するに、自然のものじゃないんですよ(笑)。だから、太る。健康に悪いし、発情も来なくなるし、いろいろなことに影響する。だから、なるべく野菜主体にしています。餌は、朝早く置きますが、ゴリラの場合、基本的には隠しておく。
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佐藤:隠すんですか?

土居:いろいろなところに置くことで、彼らが探し歩いて飽きないようにする。自然の中だったら、そもそも同じ場所に餌があるということはないわけで、自分で探しまわるわけですから。

佐藤:そういうところまで工夫されているんですね。

■世界標準の動物園


土居:たぶん日本の動物園の中で、海外の動物園とゴリラを交換できるのは、上野だけですよ。

佐藤:それは、どういうことですか?img-3

土居:ゴリラというのは人間に近い種でしょ。だから、海外の動物園では、ゴリラにふさわしい扱いをする。動物を交換する場合も、しっかりした施設にしか送りません。檻に閉じこめて1頭しか飼わないようなところには、そもそも送るという話にならないのです。今の時代、野生の動物を捕獲するということはなく、ほとんどの動物が動物園間でやり取りされています。だから、きちんとした施設をつくらないと、海外の動物園とのやり取りができないわけです。

佐藤:海外では、上野動物園のような施設が主流なのですか?

土居:狭い動物園でも、ある程度、群れでいるものは群れで飼うということをしていますね。こうした場所ではゴリラの子供も生まれてきます。それは環境がいいからで、海外の施設をいろいろ見せてもらっていますが、うちのゴリラ舎は引けを取らないですよ。今後も、少しずつ施設を改善しながら、なるべく動物の環境にあった施設にしていく。それは戦略でもあるんです。いい施設を持っていないと、海外から動物が入ってこなくなってしまいますから。
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(次回につづく)


[第1回:変化する上野動物園]

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